ご信者さんがご縁のある
視覚障害のご婦人をお連れして
身延参詣に来られました。
お一人は全盲、お一人はわずかに
見えるという中途障害の方です。
40年前、まだ目が見えたころ
三度ほど身延参詣に来たそうです。
本堂正面の菩提梯を昇りきった時、
頭上のしだれ桜から差し込む
春光がとても美しかったそうです。
思い出の力でしょうか。
同伴のこちらが驚くくらいの速さで
286段の急勾配を息も切らさず
昇りきり、とても清々しいお顔を
されていました。
ご信者さん達との談笑を
楽しまれながら、諸堂を巡り
しだれ桜を触り、香りをかいで
身延山を文字通り体感されました。
御廟所では、お線香の香りに
気持ちを向けながらお題目様をお唱えし、
同伴の皆さんの腕、杖、手すりを
ガイドとしながら、方々を歩き巡りました。
道場では恒例の「ホウケンカレー」を
召し上がっていただき、
色々なお話を伺いました。
視覚を失ってから
否が応でも歩んできた月日、
そして今も目の見えない生活を
営んでいらっしゃるという現実。
手術により一夜にして
全盲になってしまった事、
病院の屋上から飛び降りようとした事。
光を感じることもないので
昼寝をすると夜か昼か感覚が
分からなくなってしまう事。
障害の進行が続いているので
出来る時の感覚を失わないよう
料理などの手作業に励んでいる事。
時刻を知るためにも、
ラジオは生活に欠かせないので
つけっぱなしだという事。
ガイドしてくださる方との
信頼関係に不安を感じると
歩行が怖くなってしまう事。
「大丈夫ですか?」と
言われると「大丈夫です」と
つい、応えてしまうが
本当は「速度が速すぎますか?」とか
本人の目線で、具体的に問うて下さった方が
助かるという事。
お世話して頂いている身だから
言いにくい事も多々ある事。
それにしても
お二人は食事を実にきれいに
召し上がっていたし、
最初のご挨拶で握手した両手も
実に柔らかく温かく
心がしっかりと相手を見ていらっしゃる
と感じました。
そして、当たり前の日常生活さえ
困難な方々に対して
物理的にも、人情的にも、
もっと柔軟に優しく関わっていけるよう
行政の役割、民間の役割、ボランティアの役割が
うまく連携できる社会を、と思いました。
楽しいひとときは
あっという間に過ぎて
皆さん笑顔でお帰りになりました。
身延山にお参りできて良かった、
皆さんと沢山笑って楽しかった、
カレーが美味しかった、
そう感じて頂けて
本当に良かったし、
私が身延に居ることで
お役に立てたなら
それで充分と思いました。
ヒンズー教では、
お世話する人々を
神様の化身として
応対しなさいと説きます。
仏教では、
お世話する人々を
仏様として深く敬いなさいと説きます。
身延山観桜の期間も
今日でひとまず終了。
締めくくりに相応しい
化身の方々が参詣に来られた
良き一日でした。
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