映画『砂の器』

夏が来ると

どうしても観たくなる映画があります。

 

昭和49年公開の名作『砂の器』。

昨日もDVDを引っぱり出して

その世界に浸っていました。

何十回と観ましたが

毎回、号泣してしまいます。

 

夏に観たくなるのは、

映画の展開が夏の季節だから。

北茨城市でもロケをしたそうですが

夏の里山が見事な映像と音楽で

彩られています。

 

素晴らしい理由は、

内容もさることながら

日本の四季を情緒豊かに

映し出しているからです。

 

そこには、日本の原風景が

生活感と一緒に映し出されています。

40年ほど前の日本の風景は

本当に美しい。

懐古趣味で言うのではなく、

人も暮らしも自然も

味があって、しっくりくるのです。

ある意味で本能的であり、

人間味があったのです。

 

同時代に生まれた私は

幼い頃、似たような風景を見て育ち

否応なしに、それが今の人格を

形成してくれているのだなと

感謝することが多いのです。

 

今の40代は、昔の価値観と

現代の価値観双方の恩恵を受けて

育った最後の世代だと

いえるかもしれません。

 

古き良き日本で感じること。

 

東日本大震災で失ったものの一つに

日本の景勝があります。

陸前高田の一本松しかり、

北茨城の二つ島しかり、

多くの原風景が津波や地震で

無くなりました。

 

景勝の喪失は、単なる物質の喪失にとどまらず

景勝に心を癒された人々の思い出や

精神の支柱を喪失したことでもあるのです。

 

震災後、半壊した母屋を整理していた時

同居していた叔父の部屋から

多くのポストカードが出てきました。

昭和30,40年代、旅行先から土産に

買ってきた日本の景勝地の写真でした。

そこには、東北、四国、京都、様々な

日本の名所が古びた色合いの中

美しく格調高く写っていました。

 

母屋を解体する都合上

ずいぶん処分品を出しましたが

これだけは絶対、後世に残さねばならないと

奥にしまいこみました。

 

『男はつらいよ』が

今でも人気があるのは

寅さんが旅をする各地に

懐かしい日本を見る事ができるから

ではないでしょうか?

 

最近、往年の歌手や昔のアイドルが

復活!とばかりにテレビに復帰して

懐かしい歌声を披露してくれています。

ある見方によれば、イタイ!かもしれないし

今更何で?という声もあるでしょうが、

やはり、あの頃の輝きに

多くの国民が飢えているからだと感じます。

 

今の日本人に必要なのは、

古来より受け継がれてきた

この風土と精神性の掘り起こし

なのかもしれません。